ITがどうのこうのと

数年前の出来事なのだけど
あまりに衝撃的だったので今でも覚えてる


阪急神戸線の大阪から三宮に向う車内
20代前半の男女の会話

男「彼氏いるんや?何してる人?」
女「去年IT関係に就職してん、なんかプログラムがなんとかって。何してるか全然わからんけど」
男「IT!すごいやん!ホリエモンやん!めっさ金持ちちゃうの?」
女「そうやねん、ITやから多分。
  でも、バッグ買ってっていうても全然買ってくれへんねん。
  たった8万のバッグやのに」
男「そうなん?ケチやなぁ、儲かってんねんやったら買ってくれてもええのにな」
女「そうやろ?誕生日も2,3万のプレゼントやってん。ケチすぎるわ」
男「それはひどいなー、そんなんでええの?」
女「しかも仕事が忙しいって言って全然遊びにいかへんし」


「IT!すごいやん!ホリエモンやん!」
この言葉が僕の胸をえぐりました。
へんなイメージが蔓延してた時代でした。

母さん、ぼくのあのITどうしたでせうね?
ええ、20代から30代へいくみちで、渓谷へ落としたあのITバブルですよ。
母さん、あれは好きなITでしたよ。
ぼくはあのときずいぶんくやしかった。


だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。
母さん、あのとき向こふから若いホリエモンが来ましたっけね。
紺の脚絆に手甲をした。
そして拾はうとしてずいぶん骨折ってくれましたっけね。
だけどたうたうだめだった。
なにしろ深い谷で、それに株がおかしなぐらい伸びていたんですもの。


母さん、ほんとにあのITバブルどうなったでせう?
そのとき旁で咲いていた村上のファンドは、もう枯れちゃったでせうね、
そして、秋には、楽天の三木谷があの球団を買い、あのバブルの下で毎晩田尾監督が啼いたかもしれませんよ。


母さん、そしてきっといまごろは
今晩あたりは、あのヒルズに、静かに霧が降りつもっているでせう。
昔、つやつや光ったあのプログラマと関係の無いITバブルと
その裏でぼくが書いたグチャグチャなソースコードを埋めるやうに、静かに寂しく。